2008年07月13日

森近霖之助の補習授業 二時限目

霖之助「さて、今回紹介するのは建御雷命だ。有名だから敢えて説明することもないかもしれないが、知らない人や再確認したい人。暇な人がいれば是非読んでいって欲しい」

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みょふ〜会の雨水さんからお借りしています。


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霖之助「古事記では建御雷之男神>たけみかづちのおのかみ。日本書紀では武甕槌神・武甕雷神たけみかづちのかみなどと表記される。しかしここでは香霖堂原作に従って『建御雷命たけみかづちのみこと』表記で統一させて貰うよ」

霊夢「武神としては相当有名な神様よね」

魔理沙「そうかあ? あんまりピンとこないがな」

霖之助「まあそういう人のためにやっている講義だからね。よくよく思い出してみるとゲームのキャラクター何かに使われていたりするよ。個人的には某戦術機の名前として印象深いかな。
分社数は約900。全国の鹿島神社や春日神社に祀られている。
武神として有名だと言う証左として、多くの剣術の流派に鹿島の名が冠されていることが挙げられるだろう。かの有名な塚原卜伝の鹿島新当流が良い例だね」

霊夢「神話に関しては私が説明するわ。
古事記によれば伊邪那岐命が火之迦具土神ひのかぐつちのかみを斬り殺した時に剣の鍔に付いた血液が岩に飛び散って、そこから沢山の神様が生まれたの。そのうちの一人が建御雷命なのよ」

魔理沙「(相変わらず早苗の受け売りなんだろうが)何で神様が神様を殺したりなんかしたんだ?」

霖之助「話せば長くなってしまうから説明は簡略にさせてもらうよ。
伊邪那岐命の妻である伊邪那美命が火之迦具土神を産んだんだが、その名の通り火の神である火之迦具土神は伊邪那美命の体を焼いてしまうんだ。その傷が元で伊邪那美命は死んでしまい、それに怒った伊邪那岐命が火之迦具土神を殺してしまったというわけさ」

霊夢「因みに現在は火之迦具土神は秋葉さんという名で呼ばれて火防ひぶせの神として親しまれているわ」

魔理沙「秋葉原……?」

霖之助「まあ元々その地に勧請された鎮火社を秋葉大権現と誤解した人々が火除けの空き地を『秋葉の原』『秋葉っ原』と読んだのが始まりだそうだからね。間違いではないけれど……何で魔理沙の発想はそう脈絡がないのかな」

霊夢「もう一つ付け加えると迦具土神は月の巫女が使っていた『愛宕様の火』の愛宕様とも同一視されているわ。
国生みの神様を焼き殺しちゃうほどなんだからきっと物凄く熱いんでしょうね。咲夜が怯んだのも無理ないわ」

魔理沙「霊夢が真面目に修行していればあんな奴に脅されなくて済んだんだがな」

霊夢「……話を続けるわ。
建御雷命が神話の中で最も活躍するのは国譲りの一幕ね。出雲国の大国主神――これは別の授業でやる予定の素戔嗚尊の子孫ね――の許に遣わされた建御雷命は葦原中つ国(地上のこと)を天孫に譲り渡すように求めるの。その時の様子は、
十拳剣とつかのつるぎの柄を波頭に突き立て、剣先に足を組んで座り、大国主神を威嚇した』
という感じらしいわ」

魔理沙「何だかよくわからないがとにかく凄い迫力がありそうだな」

霊夢「冷静に想像すると馬鹿っぽい光景だけどね」

霖之助「(神様に対して馬鹿っぽいだなんて、霊夢……恐ろしい子!)
困った大国主神は二人の息子の意見を聞くように言うんだ。長男の事代主神ことしろぬしのかみは国譲りに同意する。しかし弟の建御名方神たけみなかたのかみは反対し、建御雷命に力比べを挑むんだ」

霊夢「でも建御名方神が建御雷命の手を掴むと建御雷命の手が氷柱や剣に変わったの。建御名方神がびっくりした隙に建御雷命に投げ飛ばされてしまうのよ。ちょっと卑怯よね」

魔理沙「この時のやりとりが相撲の起源になったと言われているらしいぜ。
ところで香霖、おまえ相撲好きか?」

霖之助「ええ……相撲、大好きですよ。だけど魔理沙。相撲じゃあ手を氷柱や剣に変えるのは反則ですね」

魔理沙(ニヤリ)

霊夢「霖之助さん。魔理沙のやることにわざわざ付き合わなくてもいいのよ?」

霖之助「あー、おほん。
その後逃げ出した建御名方神を追いかけ、建御雷命は信濃国の諏訪湖まで追い詰めるんだ。
命を奪おうとする建御雷命だったが、建御名方神が諏訪湖に留まって服従することを誓ったんでこれを許したんだ」

魔理沙「諏訪湖って諏訪子みたいだな。何か関係があるのか?」

霖之助「勿論大いに関係がある。諏訪神すなわち建御名方神は土着の洩矢神を降して諏訪の祭神になったとされている。つまり逃げた先で新たな信仰を集めようとしたんだ」

魔理沙「うーん、とばっちりで諏訪子は倒されたんだな。少し可哀想だぜ」

霖之助「それでも彼女は一方的に取り込まれたりせずに形を変えたとしても信仰を保ったんだ。そんじょそこらの神様に出来ることではないよ。試合に負けて勝負に勝ったというところだね」

霊夢「あら、でも神奈子の話だと諏訪を治めた神様は名前だけのものだっていっていなかった?」

霖之助「そこら辺のすり合わせは読者の方でやってもらいたい。ここはあくまで神様を紹介するってだけのコーナーだからね。東方の設定を紹介するコーナーではないんだよ。
建御名方神が名前だけの神様、という点が間違っているという訳ではないのだけれど……」

霊夢「今回の話は神話に則った形で建御雷命の紹介。それに対する建御名方神の紹介も同じになるってことよね」

魔理沙「ミジャグチ様だなんだってところまで手を出したら収拾が付かなくなるのは目に見えてるしな」

霊夢「大幅に話がずれてしまったけど、こうして建御名方神を服従させた建御雷命は大国主神に国譲りを認めさせ、天孫に絶対服従を誓わせたのよ」

霖之助「もう一つ建御雷命の有名な業績がある。それも紹介してくれるかい?」

霊夢「もうっ、人使いが荒いんだから。
建御雷命は神武天皇の東征を助けたことでも有名だわ。天皇が熊野に至って丹敷戸畔にしきとべを討った時、土地神の毒気を受けて天皇も兵達も動けなくなってしまったの」

霖之助「そこで天照大神が建御雷命に相談するんだ。地上に不穏があるから征討に行って欲しいとね。
しかし建御雷命は自分が行く必要は無い、以前に自分が地上を平定した時に用いた剣を下せば十分だと言うんだ」

霊夢「その剣こそ布都御魂剣ふつのみたまのつるぎ。草薙の剣を防御的な神剣とするならばこちらは攻撃的な神剣と言ったところかしら」

霖之助「れ、霊夢。その話はもういいから早く話を進めようじゃないか(魔理沙の前で草薙の剣の話は止めてくれ!)」

魔理沙「……? 何挙動不審になってるんだ?」

霊夢「この様子は高倉下たかくらじという人物が夢で見ていたの。
建御雷命は高倉下に、
『庫の中に霊剣を置いたのでそれを神武天皇に献上しろ』
とお告げを下したわ。
彼が目を覚ますと確かにそこに剣があったの。直ぐに神武天皇に霊剣を献上すると、天皇も兵士も直ぐに回復して東征を続けたそうよ」

霖之助「概略としてはそんなところだろう。よく出来たね、霊夢。
天皇にこれだけ貢献をした神様なんだから、有名で力の強いことはよくわかるだろう」

魔理沙「まあ何となくだけどな」

霖之助「さて、大まかな説明ではあるが神話の中の建御雷命とはこんなところだろう。次は歴史的な経緯について説明するよ」

魔理沙「神様の歴史だって? 何か変な感じだな」

霖之助「前にも説明したけどね、神様ってのは元々名前が無いものなんだ。だから神話に登場する神様もそれぞれの一側面に過ぎない。神話があって神様がいるのではなく、あくまで神様がいての神話なんだからね」

魔理沙「相変わらず何を言っているのかわからないな。日本の神様は複雑すぎるぜ」

霊夢「あら、でもそういう事情を全く気にしなくてもいいのよ? 基本的にいい加減なのが日本の神様の特徴なんだから。葦原中つ国の平定に尽力した武神、という認識だけでも全く問題はないわ」

霖之助「そういうわけだから説明を続けるよ。
建御雷命も元々は常総の土着神だったんだよ。それが何故ここまで神話の中の重要な位置を占めるようになったかというと二つの理由が挙げられる。
一つは大和朝廷の東国進出にある。東北地方を攻めるに至って鹿島は重要な拠点になったんだ。そのことによって鹿島神は信仰を集めていったんだ。だから鹿島神宮の分社も関東より東北よりに多い」

魔理沙「地理的な要因があったんだな。要は……運?」

霖之助「もう一つ、どちらかというと此方の方がより大きな要因だろうね。
鹿島神を信仰していた一族に中臣氏という一族がいる。どこかで聞いたことがあるだろう?」

霊夢「中臣って言われても中臣鎌足くらいしか思いつかないわ」

霖之助「いや、それでいいんだよ。大化の改新で有名な彼の出生地は常総だと言われている。つまり鹿島信仰の篤い地だ」

魔理沙「なるほど、わかってきたぜ。つまり政権の中枢に入り込んだ中臣氏が自らの神様を依怙贔屓して神話の重要人物に仕立て上げたんだな?」

霖之助「言い方は悪いが概ねその通りだろうね。
先ほどの建御名方神も元々は諏訪の土着神だ。神話の中では噛ませ犬にされてしまったが、元々の武威は建御雷命にだって負けるものではない。西の八幡神と並びたてられるくらいの信仰を持っているんだよ。分社数も約5000とかなりの数があるしね」

魔理沙「結局のところ建御雷命は運でのし上がった神様なんだな。ラッキーな奴だぜ」

霖之助「(こいつ……全く人の話を聞いていないな)まあどう受け取っても構わないよ。日本の神様は懐が広いからね」

霊夢「ところで気になってることがあるんだけど?」

霖之助「なんだい、霊夢?」

霊夢「霖之助さんは本編の方で建御雷命は甕霊みかつち、即ち元々甕の神様だって言っていたわよね? あれはどうなったの?」

霖之助「君はどうしても僕にあの言葉を言わせたいようだね。僕にだって……」

魔理沙「はいはい。香霖が大してものを知らないってことは周知のことだぜ。安っぽいてんぷらは食べたくないな」

霊夢「天丼は畳み掛けてこそ、だものね」

霖之助「(全く、こいつらときたら……)僕も色々と調べてはみたのだけれど、建御雷命が元々甕の神だという記述は見当たらなかったんだ。順番としても古事記(建御雷之男神)→日本書紀(武甕槌神)だから元々が甕の神だとは言い切れない。つまり……」

霊夢「何にもわからないってことでしょ」

魔理沙「まあ香霖ならこんなところだろうぜ」

霖之助「済まないがそこのところを詳しく知っている人がいたら教えて欲しい。宛先は→を見てくれればわかるから」

霊夢「毎回誰と話しているのかしら? 霖之助さんったら」










魔理沙「さて今回の話を纏めるとするかな」

霊夢「建御雷命は国譲りを主導し天孫降臨を助けた立役者よ。当然神格は武神で、一般的には勝利の神様と言ったところかしら」

魔理沙「当然御利益も勝負事が多いみたいだな。武道守護、芸能上達、国家鎮護、殖産興業。元々海の神様だったという関係で豊漁や航海平安などの御利益もあるみたいだな」

霊夢「基本的には勝負事なら何でもござれ、って感じみたいだから最近だと学業なんかの御利益もあるみたいよ。何時の時代も受験は戦争みたいね」

霖之助「君達はもう少し年長者に対する配慮が必要だね。
特に武術・武道の神様として名高いから、何か武道をやっている人なら一度は御参りするのもいいだろうね」
posted by sei at 20:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 補習授業シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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